#不思議系小説 第144回「Solarisの呼び声(後)」
ラジオだけが鳴っている暗い部屋でひとり。にじんだ血が指と指のあいだをすり抜ける。見上げた天井がゆっくりと時計回りに動き出し、スピーカーから流れ出る音楽が目の前の光景から浮かび上がり遠ざかってゆく。 世界が突然色褪せて、…
ハイパーグラウンドに ようこそ
ラジオだけが鳴っている暗い部屋でひとり。にじんだ血が指と指のあいだをすり抜ける。見上げた天井がゆっくりと時計回りに動き出し、スピーカーから流れ出る音楽が目の前の光景から浮かび上がり遠ざかってゆく。 世界が突然色褪せて、…
あれは、たぶん山羊だったと思う。 いつからそこにいて、何を考えているのか。何のために出てきたのか。何をしているのか……それは、全くわからない。だけどある日突然、毎晩眠れないでいる僕の頭の奥に現れた。頭でモノを考えるとき…
頭痛と違和感の中間の、脳を罵詈雑言の薄い膜で包み込んだような感触をスイムキャップのように被って久屋大通の交差点を渡る。天気がよ過ぎて溶けそうな脳味噌を、その嫌な膜で辛うじてカタチを保っているような有様で、ふらつく足取り…
The Best Is Yet To Come 一方で、さらにそのオーサカオールスターヤクザすら利用してのし上がろうとする者たちが現れた。それが独立オーサカ逸心会だった。荒廃し乱れに乱れた治安状況のなかで、しぶとく生き…
The Best Is Yet To Come 「あっ、苺郎!」「いちろう?」「さっきの白塗りの生き残りだよ。良い奴だったから逃がしてやったんだ……」 完全に戦意を喪失したどころか一生モンのトラウマを抱えたであろう苺郎は…
嫌い、を一生懸命になって言語化している時の自分と同じ顔をした老婆の群れが灼けた大地に孤独な影を刻み続ける。赤く燃える太陽が真っすぐ照らすから、逃げ場を失くした暗闇が断末魔をあげてのたうち回る。 自分が暴力暴言浴びたい…
Tidelandに佇んで、ぼんやりした空に浮かぶ澱んだ太陽を見上げている。じんわり滲みながら時間だけが黄ばんだ空に溶けてゆく。薄曇りと晴れ間の曖昧な境目に向かって名前も知らない白い鳥たちが無数に飛び上がりバサバサと折り…
不思議な木の実をぶら下げた、眠れぬ街の摩天楼。 星空も三日月も見上げることなく、首吊り坂の病院前バス停に定時到着。 赤いバスに乗って雲の上まで。タイヤもディーゼルも要らない、ただ座っていれば何処にでも行ける。 窓にうつ…
The Best Is Yet To Come ガパン! と、たわんだ音がして呆気なくロッカーが開くと、中からは「わあーーっ!」「さ、サンガネ! こんなところに居たのか」 鬼でも蛇でもなく、オタクが、わが友が出て来た。…
トテトテトテ、と一生懸命に走って来た幼い男の子。1歳半か2歳くらいだろうか、青空の下、緑の芝生で笑ってる。 キャキャキャキャ、フギーッ! キャーッ! 限りなく音に近い声をあげて、ゴキゲンな様子を歌うように伝えて来る。小…
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