1000年後、僕は感情を持つロボットに恋をして世界を闇に染める 第二話

 100年ほど前、感情を持つロボットを実験台として使う男がいた。その内容はとても酷く、作り物の瞳を抉りとり、1つ1つの爪や歯等を剥ぎ取るなどの聞くに耐えない物だった。

 ロボットは痛みこそ感じないはずだった。だが、長時間かけて壊していくと次第に『殺して』と発するそうだ。そしてその感情は恐怖に変わり、やがて泣きわめくらしい。

 男はよく、この言葉を口にしていたようだ。
 『泣き叫ぶ姿を見るのが楽しい』と。

 その男の名は知らされていない――。

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 時代は3058年。

 ある日、俺は組織のリーダーである東本祐希(ひがしもとゆうき)に呼ばれた。
 俺たち組織が暮らす家、即ちアジトは中が結構広くて部屋がいくつもあった。呼ばれた場所はそのうちの1つである。

 俺がこの組織に加わってから1週間は経っただろう。
 しかし未だに破壊ロボットの動きはない。今回はその話なのだろうか?

 しかしリーダーの元へ向かうと、意外と『おお、来てくれたか! 』みたいなノリで笑顔を浮かべていた。なんというか、かなり緊張は解けた。
 

「樫村、お前を呼んだのには理由があるんだ」
「なんですか? 」
「お前はどうしてこの組織に加わったんだ? 」

 俺にとっては予想もしていない質問だった。

「リーダーが、俺の命の恩人だからです。」

 俺は、破壊ロボットを殺すために作られた組織『ロボットキール』の兵士の1人だ。組織の名前はそのまますぎてクソダサいが、俺はこの名前を結構気に入っている。
 数はざっと13人ほど。この村の生存者の数が20人であるので、生存者の殆どは俺のように組織の一員となった。

 もともとはこんな組織があったことすら俺は知らなかった。ロボットキールを知るきっかけになったのはそう、リゼシュー村に大量の破壊ロボットが送り込まれた時である。
 
 俺は何をしていいかもわからずにただ立ちすくんでいた。激しい攻撃に苦しむ人、炎に包まれて滅んでゆく町をただ呆然と見つめながら。

 そんなことをしていたら、いつの間にか一体の破壊ロボットが俺の目の前にいた。それは一瞬だった。ギシギシと重そうな音を立てながらそのロボットは拳を俺の顔面に振り落とそうとしてきた。

(やばいっ! )

 俺が死を覚悟したその時だ。

 長くて死神が持つような……、そう、大鎌のような物を持った男が現れた。その人が、ロボットキールのリーダーである東本祐希である。。リーダーはとても強く、一瞬で破壊ロボットの首を切り落とした。

 そして俺の元に飛んできて、『逃げるぞ』と声をかけてくれたのだ。

 リーダーは俺の命の恩人だ。
 そんなリーダーの横に立って、破壊ロボットを次々と殺し平和を取り戻すということをしてみたかった。

 かっこいいじゃないか。
 まるで正義のヒーローの相方みたいで。

「本当にそれだけか? 」

 リーダーの一言に俺は内心ドキッとした。

「な、何言ってるんですか。それだけですよ」

 リーダーが俺を真っ直ぐな瞳で見ている。
 全てを見透かすような瞳だ。
 ドキドキと心臓の音が早まる。

「……そうか。ならいいんだ」
「はい……。では、」

 早くこの場所から立ち去らないと。

(『あの事』がバレたら一巻の終わりだ……! )

 俺は額に汗を感じながら、早足で部屋を出ようとした。

 が、

「……なあ、ミアって知ってるか? 」

 ミア。

 リーダーの言葉に俺は足を止めた。

「――さあ? 知りませんよ」
「そうか、分かった」
「失礼します」
 
 ミア。知らない訳がない。
 俺の家族で、俺にとって誰よりも大切な人だった。

 でも、『あの事』を知られるわけにはいかないんだ。 

俺がこの場所にいるために……

『続く』

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yumaru

小説を書くのが好きで、漫才とドラえもんが大好物な人間です。 小説は小説家になろうさんでも載せています。 https://ncode.syosetu.com/n7344fq/ よろしくお願いします〜。