1000年後、僕は感情を持つロボットに恋をして世界を闇に染める 第十二話

「……かしこまりました。」

 え? なんで?

――『殺してしまいなさい。食べる価値もないわ』

 さっきのルビーナの声が頭から離れない。

 なんだよ、それ。
 こいつは本当にルーシーの母親なのか?
 なんでそんなことを言うんだよ。

 ルーシーの顔を見ると、目には光が無かった。

「――おい! 」

 俺は思わず叫んだ。

「お前は俺が殺す」

 ルビーナは少し口角を上げた。
 まるで俺を、嘲笑うかのように。
 ……馬鹿にしてるのか?

「君の相手はこの私だ」

 執事みたいなロボット。略して執事ロボットは、そう言って腰に差してあった剣を抜いた。

 えっ、こいつ剣使えるの? ロボットで剣を使えるやつがいたのか、初めて見たな。
 てかこいつ、眼鏡もかけてるし何かもうむしろ人間でよくね??
 見た目ほぼ人間だし。動きが少しかくかくしてるだけでさ。

 そんなことを考えていたら、いつの間にか執事ロボットは俺の目の前に来て剣を振り上げていた。

――やばいっ!!

 カキーンっ!!

 物凄い音が地面を叩きつける。

 間一髪、俺は避けた。
 しかし、1歩でも遅れていたら、俺はきっと今頃真っ二つに……。

 考えただけでも恐ろしい。この執事ロボット、相当腕力があるんじゃないか?見た目はこんな、賢そうではあるけれどひょろひょろっとしていてもやしみたいなのに。

「ちょ……、っと待てよ!! 」

 攻撃は瞬時に次々と繰り出される。
 俺はひたすら避けることに精一杯だった。

 このままじゃ拉致があかない。

 仕方ない……。
 
 俺は腰に刺してある刀に手を伸ばす。

 執事ロボットが次に剣を振り上げた瞬間、俺はその攻撃を刀でガードした。

 お、重い……。

 ガードしたはいいけれど、キリキリと剣が刀を押してくるため、押しつぶされそうだ……。

「ん……?なかなかやるな」

 諦めたのか、執事ロボットは攻撃を辞めて一歩下がった。

 いや『なかなかやるな』って……。
 今の所ほぼ10-0で俺が負けてるんだけど。

 
 弱ったな……。魔法を使いたいけど、それは呪文を言うのに時間がかかるからその間に殺られてしまう可能性が高い……。
 でもこのまま戦ってても、多分俺が先に体力を消耗する……。

 どうしたものか……。

 ……っ!!俺は気がついた。
 いつの間にか、執事ロボットの背後に回っていた影に。

「動かないのか。ならばまたこちらから行かせてもらうっ!!」
「――それはどうかなっ!!」
「何っ!? 」

 執事ロボットは振り返る。

 後ろにいたのは先崎だった!
 先崎は勢いよく剣を振り上げた。

「サンダー斬りっ!!」
「うっ……!!」

 先崎の攻撃は執事ロボットに命中する。
 執事ロボットの身体からはビリビリと音を鳴り、まるで痺れているかのようにそいつは動かない。

「今だ!行け、樫村っ!!」 

 一瞬俺は何が起こっているか分からなかったが、まあそんなことを考えている余裕は今はない。

「ペデューサアラクレパラモーレっ!!」

 初めての実戦で使った魔法。
 効果はあるのか……!?

「うっ……、ああ……!!なんだこれは……!?」

「……っ!?」

 予想外だった。

 俺はてっきりこの間の時のように破裂するものだと思っていた。

 しかし違った。

 執事ロボットがいた下の地面に紫色の空間ができたのだ。

 そしてその空間からは30個くらいの手だけが現れ、その手は執事ロボットの足を引っ張った。執事ロボットの身体は空間へと引きずり込まれていく。

「待ってくれ!俺は、ルビーナの言うことを聞いていただけだ!助けて――……っ!!」

 それが、執事ロボットの最後の姿だった。

 執事ロボットはまるで最初からいなかったかのように、姿を消してしまったのだ。

 ……俺の手足は、震えた。

『続く』

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yumaru

小説を書くのが好きで、漫才とドラえもんが大好物な人間です。 小説は小説家になろうさんでも載せています。 https://ncode.syosetu.com/n7344fq/ よろしくお願いします〜。