#不思議系小説 第82回「狂い咲きTerry Funk」
よく晴れて薄い雲が少し浮かぶ間抜けな青空を羽ばたいてゆくスワンが一羽。セメント工場のタンクの上を音もなく、泳ぐように滑るように飛んで行く。何もない街の何もない遅い朝の何もない道のうえで、何もない人生を歩んで、見上げた空…
ハイパーグラウンドに ようこそ
よく晴れて薄い雲が少し浮かぶ間抜けな青空を羽ばたいてゆくスワンが一羽。セメント工場のタンクの上を音もなく、泳ぐように滑るように飛んで行く。何もない街の何もない遅い朝の何もない道のうえで、何もない人生を歩んで、見上げた空…
彼女の眼差し、面影にも慣れてきつつあったある晴れた眩しい朝。少し肌寒さを感じて布団を寄せようとぐっと引き上げるときに妙な手ごたえを感じた。ずっしりとしたそれは重さでいえば5キロ少々。健康な赤ん坊くらいの重さのずっしり感…
静岡県静岡市。午後3時20分。バイパスの丸子(まりこ)インターを降りてすぐの小さなアパートメントの一室に彼女は住んでいた。名前は「ななきる」と名乗った。勿論ハンドルネームだ。ななきる、とは7キルのことで、つまり七度の人…
ぶづんっ! と ばつんっ! と ぐぶちゅっ の混じり合った、複雑で湿りきって粘膜質な、嫌な音が響いた。そして僕の頭上から好き放題降りかかる濃黄色のドロドロした液体を浴びながら、ロクにほぐさず潤滑剤代わりに素肌用の乳液を…
「ああーー、ハオいわー」 ???「っあーあ」 あれ、今あぶくちゃん居た?「ねえ、あぶくちゃん?」「んんー?」「ああ、やっぱ聞こえるんだ」「ほーんと、壁、うっすい!」 ガタタンガタタン……列車はスピードが乗ってきて、車輪の…
無人駅を闊歩する虚空の雑踏。顔のない人いきれのなかで、僕は彼女の姿を見失ってしまう。狼狽える僕の目の前にブルーの列車が滑り込んでくる。 寝台特急サンセット倫理。それは夕暮れに向かって走り出し真夜中を目指す列車。あれに乗…
「泣きたくなるほど、ノスタルジックになりたい」「どうしたのあぶくちゃん。急にザ・イエローモンキーみたいなこと言い出して」 だから、狭いベッドの列車で旅に出ることにした。いわゆる寝台特急だ。近年では少なくなったが、今でも幾…
青。空も海も山も、みんな青い色をしている。だけど、その青は一つ一つ全然別の色をしている。青い、蒼い、碧い。全部同じで、みんな違う。好きも、すきも、スキも、愛も哀も藍も。きっと全部違う。 人から好かれたことも無い癖に人に…
ふと気づくと一瞬……ほんの数十秒ほどが経過していた。目を開けたまま気絶した挙句、白昼夢を見ていたようだ。後続車から苛立ち切ったクラクションを投げつけるように、ハンドルの中央部を何度も小突く小太りで似合わないうえにイヤミ…
キリキリ鳴ってる目覚まし時計がガラスの破片を絨毯に 蝙蝠の目玉を煮込んで薊蕎麦の漬け汁にしてお立ち合い。僧帽弁閉鎖不全症の特効薬に野次馬集めて万々歳、脂の浮いた漆椀を手に手に総鮫腹(みなさめばら)湾掃討作戦脱出失敗お…
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