第72回「電波探偵あぶくちゃん」2
やがて地下通路あらためカタコンベ横丁は螺旋構造の滑り台や宇宙ブランコを備えた地下公園広場と合流し、今や枯れ果てて久しい地下水路を跨ぐ導水橋を渡ってゆく。勿論、欄干の電灯は消えたまま。ポウと浮かんだ極小プラズマ太陽球の白…
ハイパーグラウンドに ようこそ
やがて地下通路あらためカタコンベ横丁は螺旋構造の滑り台や宇宙ブランコを備えた地下公園広場と合流し、今や枯れ果てて久しい地下水路を跨ぐ導水橋を渡ってゆく。勿論、欄干の電灯は消えたまま。ポウと浮かんだ極小プラズマ太陽球の白…
湾岸特急カシオペア号からプラットホームに降り立ったのは丸いレンズの眼鏡にフリフリの黒いワンピース、黒髪をショートカットにした君。他に乗客は殆どおらず、流木のような杖を突いたボロボロの老婆がほっかむりの向こうから「おはん…
カンタン手間いらず、いつでも気軽に吸引出来ます! と書かれた新聞広告。三面記事の右下に長方形でレイアウトされた水蒸気式のフラスコ煙草の吸引器。透明な丸いガラス管の中で、ごぼごぼいってるあぶくを見ているだけで随分と遠いと…
ピアノの妙なる調べと、甘美なギターアンサンブル、突き抜けるドラムス、はらわたにブンと響くベースギター 重厚な演奏と軽快な音色とが調和した見事な楽曲だ。まるで穏やかな冬晴れの乾いた青空に白く爽やかな鳥たちが自由に飛び回っ…
夜。暗い部屋。灯りは消したまま。家の外の、街灯のエルイーディが窓から入り込んで来て消したままの丸い蛍光灯カバーを落ちものパズルの玉粒のようにぷよぷよ揺れるさまを照らし出す 揺らぐ蛍光灯カバー、白く差す人工的な光、天井一…
そして滲んだ天井と黄ばんだ蛍光灯がうっすらと実態を失くし、遠近感も薄れ、背中を軸に体がゆっくりと回転し始めた 沈んでゆく。いつもと同じだ、安くて量が多いだけの酒ですらないアルコール飲料で咳止めの錠剤を流し込むと早けれ…
久しぶりに絵でも描こうかと思って、鉛筆をトキントキンにして消しゴムもシャーペンもボールペンも揃えたのに紙が無い。なあんだ、つまらねえな。鬱陶しいめんどくせえ 別段意味もなく、ただ続けざまに口からこぼれ出る悪態が止まら…
灯りを消してベッドに横たわる。疲れた体が浮き上がりながら沈んでく。この世の中に自分が存在し続けることを拒絶するかのように。部屋の真ん中に置いた鏡に月明かりが差して、遠くを走る深夜特急がレールを蹴る足音を運んでくる 雨が…
退屈の積もった、積み木の摩天楼。楼閣を支えてる人柱の群れ。群れからはぐれて人柱にもなれずに、いずことも知れず消えてゆく人。消えた人を探して伸びてゆく蔦。蔦の先で膨れ上がりねじれゆがみ破裂した、奇妙な果実 いつだって心の…
色んなことがあった。あり過ぎるほど、あった── 退屈せえへんかったよ。滋賀の田舎から引きずり出されて、掻っ攫われるように愛知県へ連れて来られてからの長い長い月日があっという間に駆け巡る。これが走馬灯ってやつやね、と、こ…
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