空白を限りなく凝縮して具現化した白いレンガを敷き詰めて伸びてゆく、退屈で憂鬱なWinding Roadをトボトボ歩く。
白けた気持ちと、冷めた記憶と、殆ど空っぽな心を後生大事に抱えている。
空虚を限りなく凝縮して具現化した青いレンガを敷き詰めて真っすぐ伸びた、退屈で憂鬱なWinding Roadをトボトボ歩く。
白んだ空と、醒めた夢と、諦めて背を向けた時の作り笑いを貼り付けて生きている。
誰もが背を向け見失った神様が井戸の底
幾千万の餓えたる魂が叫ぶ罵詈雑言の轟音
壁一面に描かれた摩利支天が荘厳
自分を裏切り見失った神様が井戸の底
億千万の餓えたる魂の行きつく先は久遠
声だけが溢れかえり空っぽでいっぱいの無音
答えの数だけ灯りの点いた夜景が漆黒の海の向こうに広がっている。その灯の消える瞬間を目の当たりにしないためには、大勢の光の中に紛れ込ませてしまえばいい。ひとつひとつの灯りの明滅など、誰もそこまで気にしてられない。
自分の灯した明かりを守り、またより一層の輝きを放たせるため誰かの灯りを奪ったりくっつけたりしている。キャンドルを握り締め降りしきる冷たい雨のなか奪い合う幸福の体温。凍えて震えて崩れ落ちた膝を濡らす、善意が疲弊し沈殿した、この世で最もタチの悪い、どす黒い泥水。
この先ずっと生きて安月給と高くついた自業自得に辟易しながら暮らすより、今すぐに、一分一秒一日一時間でも早くくたばった方がよほどラクだし安上がり。
そんな事実を背中に焼き付けられたまま生きる。世の中は意識の高さをサスティナブル。貧乏人は金持ちのことが、お金持ちは貧乏人の暮らしがわからないまま、上と下とに線を引いて立場を示し、顔を上げてキラキラ生きる輝きと、俯いて暮らすドロドロした生ぬるい濁流を隔てて早しインターネッツ。循環型社会を回すお金じゃ買えない気持ちと絆。
せっかく死にたくなったから、その気分を大事にしよう、もっと自分を甘やかして優しくして大事にして尊重して、直感を信じて……周囲に死ぬほど甘やかして優しくして大事にして尊重してもらったことを自分の直感だと信じて疑わないインフルエンサーのような生き方って楽で幸せそうだけど自分がやるのは絶対ヤ。
気が付けば深夜高速、豊田ジャンクションから伊勢湾岸。
名古屋南、大府、東海、名港潮見。
ハンドルを握る僕は行方知れずの群れの中。真夜中の片側三車線を回遊するトラックとトラックとタンクローリーとトラックに紛れた僕がコンビナートのネオンを横目に走り続ける。ヘッドライトは手前しか照らさない、自分で振り向き照らした過去に醜いものは見当たらない。
何処まで行こうか。目的地なんてものがあったら、毎日こんなに悩んだり悔やんだり迷ったりもしない。明確な目標なんてものすら何時の間にか贅沢品。
過ぎてゆく緑の案内看板や、耳元でわめく純正据え付けのナビゲーションも、しつこく追いすがる位置情報のアプリケーションも、温もりと繋がりのコミュニケーションも、断ち切るために大音量のCalifornication.
それだけで十分だ。いとも簡単に、何もかも絶縁できる。
死にたがってる自分が、今日まだ生きてる私の頭上に冷や水をぶっかけて嗤ってやがる。あんな嫌な奴にアタマ下げて日給1万2千円か。やめとけやめとけ早く死ね。
その方が早いし、ラクだし、安上がりだ。
どうせこの先、誰を好きになっても、誰と知り合っても、誰にも好かれず残らない、抜け殻に脂肪のついたように生きるだけ。世間や生活への不平不満は飲み込んで、読まれもしない物語(ハナシ)をコソコソ紡いで、何かしている気分に浸っているだけ。
そんな時間すら削るに値する奴か、あいつは。
難しいことは夜、あまり考えない。
死にたがりの心のドアを叩け、そこがきっとおまえだけのばしょ。
自分だけの天国。狭いベッドの列車の、寝台車のドアを叩け。だんだん強く。
返事をしたのは確かにオレだが、叩いたオレは誰だろう?


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