OSAKA EL.DORADO 38.

 黄緑色の泥濘のような物質はマノの胸ほどの高さで波打ち、ゆらゆらうねうねと蠢いていた。透明感は失せたものの体積は飛躍的に増大し、半球形のドーム状に体勢を保つほどの弾力も備えているようだ。
 目玉や口と言った感覚器官や消化器官などは見当たらず、手足も体毛も無い。つるりとした表面には外皮に近い細胞膜のようなものが張られて、そのなかでスライム化した細胞が脈動することでコイツは動作するらしい。

「行くぞ!」
 ダァーッ! っと鬨を挙げたマノが半身になりつつ飛び上がり、両足を揃えて巨大スライムの、いわば肩と思わしき場所に蹴り込んだ。が、
「うわ、うわうわうわっ……!」
 マノの両足は横っ飛びに蹴り込んだ姿勢のまま脛の辺りまでめり込み、そのまま勢いよく押し戻された。中空に放り出されたマノは体勢を整える間もなく背中から地面に叩き付けられ、団地や道路が激しく揺れ動いた。
「このぉ!」
 かぶりを振って気を取り直したマノが、今度は正面からスライムに組みついた。柔軟ながら弾力性を持つ外皮細胞と内部の流動体がぐじゅるぐじゅると蠢き、マノの腕や掌を包み込もうとする。それをまた抑え込もうと躍起になるが、もがけばもがくほどスライムは彼の手足にまとわりつき、踝や肩口にもたれかかるように蠢き、ずるずるぐるべちゃと嘲笑うかのように湿り気を帯びた不快な音を立てる。

 ぐぶぐぶばふがふ、と空気を孕んだ音とともに、スライムがその体を縦に引き伸ばしてゆく。地面に垂れていた分を寄せ集めて上から引っ張られたように円錐型に伸びたそれがマノの背丈を超したとき。今度はぷつんと糸が切れたように覆い被さり、マノを包み込んで押し流す。頭上から肩、胸、腕、腹、そして足と、およそ骨格や筋肉というものを持たないスライムがその全体積を浴びせて来ると、マノはそれを全身でくまなく受け止めることになる。そうして支えを失い倒れ込んだ先には、千島団地の3号棟があった。
勇敢なる深紅の巨人は轟音と共に瓦礫とスライムの下敷きとなり、土煙の中に沈んだ。

「マノ!」
「ちくしょう、なんてヤツだ!」

 建物の半分を抉り取られるように崩れた千島団地3号棟の残骸が揺れ動く地面に共鳴し、今にも完全に崩れ落ちようとしている。その足元では瓦礫混じりのスライムを浴びたマノがもがき苦しんでいた。漸く晴れて来た土煙の向こうに、彼の黄金に輝く相貌がぼやけて見える……顔面にスライムが張り付いているのだ。
 その上を這うようにずり上がるスライムの本体。あの蠢く巨大な半球状の流動体が顔面に圧し掛かったら、幾らマノでも窒息してしまう。どうにかしないと……!
「サンガネさんよ、奴ぁ水ッ気(ケ)の塊だろう?」
「ああ、確かにそうだ。あの体の殆どが水分で出来てる、だからあんな風に異常な柔軟性を持っているんだろうね」
「じゃあ電気を流せば通るかな?」
「……そうか! 君の左腕からワイヤーを撃ち込んで、そいつに電気を流せば!」
「あのスライム野郎に電撃を喰らわせてやれる!」
「やってみよう!」
「ああ。舎利寺、頼む!」
「押忍!」

 舎利寺のアイセンサーから送られてくる映像がボクの端末に映し出される。マノに覆い被さり蠢く巨大スライムに向かって、義手を取り払った舎利寺の左腕から銀色のチェーンアンカーが勢いよく飛び出していった。
 陽光を浴びてギラリと光る鎖の先には鋭い鉤がついていて、それがスライムの背中と思しき場所にズバンと埋まった。
「今だ!!」
「押忍!!」
 舎利寺の体内から放出された電撃は50万ボルトもの超高圧で、スライムの全身を瞬く間に襲った。あちこちで水分が瞬間的に蒸発し、パチパチと火花が散ったり、痙攣して細切れに千切れ飛んだりして、しまいには飛び退くようにしてマノの体から剥がれ落ちた。が、
「ギャーーッ! あちちち!」
 ボクたちは忘れていた。幾ら歩く最終兵器たる宇宙超人であっても、マノもまた生身の肉体だったことを。スライムから超高電圧の御裾分けを受け取ったマノは全身に電撃を浴び、青白いスパークを放ちながら悶絶してしまった。
「ああっ、マノ! ……ごめーん」
 ボクは思わず画面に向かって拝むように手を合わせた。
「こんちくしょう、今やったのは誰だ!?」
「舎利寺の電撃だよ!」
「サンガネさんよ、そいつぁあんまりだぜ!?」
「しゃーりーじぃー……!」
 頭やら肩やら胸板を覆う銀色のプロテクターからもプスプスと白く焦げ臭い煙を細長くたなびかせながらマノが舎利寺を睨む。
「すまねえ……マノ」
 巨体をちぢこめた舎利寺がすっかり小さくなってシュンとしょげている。
「おかげで助かったよ、持つべきものはともだちだ!」
「(ともだち……)」
「よかったね、舎利寺!」
「ああ。でもサンガネさんよ、アンタにも後で電撃を喰らってもらおうかな」
「ダハハハ、サンガネっちゅうたか。口は禍の元ってやっちゃな」
 ワッショイにまで笑われてしまった。だが彼の言う通りだ……なんとしても電撃は回避しなくては。

 そんなボクたちがワチャついているあいだに、電撃を喰らってモゴモゴと蠢いていたスライムが体勢を建て直し始めた。焦げたり乾燥したりダメージを受けた表皮がポロポロとめくれて剥がれ落ち、新しく瑞々しい表皮が膜を張り、再び潤いを取り戻すと元気よくぶにゅぶにゅ唸りながらマノを探して向き直った。

「なあサンガネ、奴は目も鼻も触角みたいのも無いんだよな……一体どうやって僕を探し当てているんだろうな」
「言われてみればそうだね。だけど逆に、奴は全身が剥き出しの感覚器官だとしたら……つまり体じゅうで音や振動、温度、エネルギー波なんかを感知してるんじゃないかな」
「そうか、だから電撃を喰らって過敏に反応したんだな」
「ただ、それだと集めた情報をまとめて、読み取ってまた指令を飛ばす仕組みが説明できないんだ」
「手っ取り早く色々と試してみたらどうだ、火で炙るとか八つ裂きにしてみるとか」
「そうだな、そうしよう!」

 明るい声で通信を切ったマノも蠢くスライムに向き直った。そして深く息を吸い込むとスライムに向かって両手をかざし
「Fire After Fire!!」
 と叫んだ。途端にマノの両掌から巨大な炎が噴き上がり、スライムを包み込んで轟々と燃え盛った。地獄の業火がスライムの表皮を焦がすも、体積が増したことで水分量も大幅に増加したせいか効果はいまひとつのようだ。

「これじゃない、と。じゃあこっちだ! Emerald Sword!!」
 今度は左手にエメラルドグリーンに輝く光の剣を出現させたマノがスライムに駆け寄り、素早く何度も斬り付ける。レーザー光線の剣はスライムをいとも容易く切り裂いていって、周囲には大小さまざまなスライムの切れ端がボトボトと転がって震えた。
 やがて流石の巨大スライムも全身の3分の1近くを切り刻まれるに至って、おののくように身悶え始めた。じりじりと後ずさり、震えが浅く小刻みになってゆく。濁りも強く、もはや最前までの透明感は完全に消え失せて不純物と有機物で薄緑のコンクリートみたいになってしまった。そしてマノが、その濃く濁ったスライムの内側に切り込んだ瞬間。
「あっ!」
「どうした、サンガネ!?」
「マノ、あぶない!」
 ボクの声に注意を逸らされたマノの周囲に散らばったスライムの破片たちが、突如として激しく振動し元あった場所へ戻ろうとしていた。地面を這いずり、跳躍し、いっそマノごと取り込む勢いだ。
「わわわわ! クソ、なんだってんだ」
「まずい……!」
「サンガネさんよ、何か見えたのか」
「ああ。恐らく奴の……」
「しまった、足を取られた!」
思わずうめき声を上げたマノの両足は膝下あたりまで濁ったスライムに飲み込まれ、そのまま地面に溶接されたように固定されてしまっている。
「だあーっ!」
 勢いをつけて飛び上がるも、スライムはおぞましいほどの柔軟性を発揮し、彼の足を包んだまま糸を引くように伸びあがって離さない。
 着地出来ず地面に引きずり倒されたマノが、そのまま蘇生しつつある巨大スライムのもとへ引きずられてゆく。手に持った剣を振り回し、辛くも長く伸びたスライムを断ち切ったのち、団地を挟んで体勢を立て直すマノ。

「サンガネ、奴の様子が急に変わった……一体どうしたんだ」
「マノ、いま君が斬り込んでいったのは奴の核(コア)だったんだよ!」
「なんだって」
「モニターにハッキリうつってた。赤黒い塊がスライムに包まれ癒着しながら蠢いている……おそらく、そいつが奴の弱点だと思う」

 核が呼び寄せた小さな塊は、やがて大きな塊へ……そしてまた元通りの巨大スライムに戻るまでさしたる時間もかからなかった。恐るべき再生能力だ。

「奴は何も、巨大化したことで自重と姿勢を保つためのツナギとして不純物を取り込んだり、硬度と水分量を増したりするためだけに、体を濁らせたわけじゃなかった。あの濁った体には自然の成り行き以外の意味があったんだよ」
「核(コア)の隠蔽(カヴァー)……!」
「そ」
「つまりそこを叩けば」
「奴ぁオダブツだ」
「そ」
「で、どうやってその核とやらを叩くんだ?」
「さあな……」

 蠢くスライムが三度、体積と重量を増しているように見える……団地じゅうの樹木や土、コンクリートからガラス、鉄骨にアルミ……ありとあらゆる有機物と金属、石灰質、そして破損した上下水道からは水分を吸収し続けているのだ。あのスライムは細胞の一つ一つに個別の生体反応がある。つまり、奴は一体の巨大生物ではなく、一匹の微小生物が尋常じゃない数の塊となって蠢いている。だが、その一つ一つは融合したり接合したりして様々に繋がり、栄養素や水分、運動信号を共有している。
「つまり、それらの中枢を司る核と、実験体程度の個体が残っていれば」
「何度でも再生可能なエコロジーモンスターってわけだね」
「ケチな一心会の喜びそうなシロモノだな、オマケに材料から生産まで引き受ける奴等がゴマンと居る」

 そのゴマンと居た筈の「人財」どももすっかり溶かし尽くされ、もぬけの殻となった高層建築の大伽藍を巨大なスライムが蹂躙してゆく。千島団地に隠された実験生物、その生物が巨大化したスライムの隠れた核(コア)。
「もう電撃は不純物が多すぎて通らない、火炎放射や冷凍光線では……水分が多すぎる。切り刻んでも再生される……組みついて殴る蹴る、投げ飛ばすのもダメ。なあアンタ、一体どうやって勝つつもりなんだ!?」
「心配するな、ワッショイ。……いいなあ、ワッショイ。ワッショイって名前は呼ぶたびに明るく楽しくヤケクソになれる」
 マノは蠢く巨大スライムを睨みながら独り言ちた。
「……勝機があるのか、マノ」
「もちろんだ。自分で言って自分で気が付いた」
「ボクたちの会話で、ってこと?」
「ああ。持つべきものはともだちだ」
「(ともだち……)」
「だけどよお、オイラぁサッパリ」「ワッショイ!」
 悲嘆にくれるワッショイの声を遮って、マノは背中を向けたまま呟いた。
「今日から君も友達だ」
「マノ……!」
「舎利寺、サンガネ! さっきみたいに攻撃してスライムを止めてくれ。下から爆発させて持ち上げてくれると有難いな」
「オーケイ、マノ。了解だ」
「こんなこともあろうかと、イイもの付けておいたよ! 舎利寺」
「ああ。コイツで派手にやろう!」

 団地の影からスライムに向き直った舎利寺が右腕を突き出して左手で肘の辺りをグっと抑え込む。両足でしっかりと地面を踏みしめて、視界の中で赤い標準を合わせてゆく。スライムの、いわば腹に当たる部分。地面スレスレより、少し上……。
「撃て!!」
 舎利寺の右腕が火を噴いて飛び出してゆく。肘から先のアタッチメントは、それ自体が武装兵器にしてあったのだ。彼自身をロケットランチャーの砲台として考えたボクの目論見は当たって、あの頑丈な体なら普通より多めに推進燃料と爆薬を仕込んでもしっかり発射してくれた。
 舎利寺の右腕がスライムと地面の境目に向かって突き刺さるように飛んで行き、黒煙と瓦礫に埋もれて見えなくなった。そして一瞬遅れて、地面とスライムをめくり上げるような爆炎が噴き上がり、スライムは仰け反るようにして立ち止まった。
「今だ、マノ!!」
「Muybien!」

 同時にマノが走り出し叫んだ。
「Cover Take Cover!!」
 マノは自分の周りに半球状の透明なカバーシールドを張った。さっきスライムの攻撃を防いだものだ……そしてそのまま、持ち上がったスライムの腹に潜り込むようにして突っ込んでゆく。
「そうか、あのシールドでスライムを押しのけて」
「そのまま核まで押し込むつもりか!?」
 黄色っぽく光るシールドが垂れて戻ろうとするスライムを遮り、マノの周囲を包んでゆく。吹き飛び、千切れた大小の塊も蠢きながら集まって来る。
 あっという間に、マノの体が見えなくなった。シールドの光だけが濁ったスライムが伸びてうっすらと漏れている。ぐむ、ごも、うぐ、と唸るような音を立てて蠢くスライムが、彼を飲み込み圧し潰そうと脈動する。
 一方のマノは、スライムの核へ肉薄していた。蠢き流れ続ける粘液を掻き分け、振り払い、辿り着いたそこには……。

「栗永!?」
 スライムの核は、祭壇に祀られた生贄の生首のようにマノの頭の高さまで持ち上がってそこでスライムと結合していた。血管や筋肉などではなく、スライム自体が溶け込み、核そのものと徐々に融合し赤黒く変色している。核は巨大化したマノの頭と同じくらいの大きさだった。巨大な心臓のようにも、脳のようにも見えた。縦横に皺が刻まれ、それが規則的に脈動し、周囲のスライム細胞に透明な粘液を送り出し、またそれを吸い込んでいるのが見える。
「キャプテン秣、それに……あの時のインフルエンサーも」
 マノの眼前で蠢く巨大な核の皺や持ち上がっては縮んでゆく核表皮には、既にスライムとなった人々の苦悶に満ちた表情が刻まれていた。それは蠢きに併せて膨れ上がり、泣き出しそうな顔や後悔に沈んだ眼差しを向けて、また萎んでゆく。
「どうしたんだ、マノ」
「……いや、核(コア)な界隈の顔馴染みが居たもんでね」

 カマボコ板から送られてくる信号が危急を知らせていた。
 モニターに走る赤いアラームサマリは敵エネルギー反応異常高、それをそのまま彼に伝える。舎利寺とワッショイは現場で固唾を飲んでいる。
「ちくしょう、コレでも喰らえ!」
 マノの手に三度、緑柱石のように輝く剣が現れた。体内のエネルギーを具象化したそれを携えて身構える。
「Emerald Sword!」
 シールドの内側から踏み出しつつ、コアとスライムの癒着する部分を素早く、縦横無尽に斬り付ける。どす黒い赤から濁った緑色へ、グロテスクな彩色の変化が飛沫になって散らばる肉片に見て取れる。
 そのたびに核の表面で蠢く顔、顔、顔どもが苦しみ、泣き叫び、声なき悲鳴をあげている。一心会に与したつもりで奴等の手先になり、神輿を担いでしまえば、細胞のひと粒になってもなお巨大な化け物の内側に閉じ込められたまま苦しみ抜くことになるのか……。
「ダメだ、スライムの再生能力が強すぎる!」
 モニターにはひっきりなしに警報が鳴り響き、未処理アラームが左から右へ積もるように流れてゆく。
「マノ……!」
「飲み込まれちまったのか……!?」
「そんなバカな」

 壊滅状態に陥った千島団地に砂塵が舞う。
 木立も、広場も、道路も店も遊歩道も、千島団地を形作っていたものが悉く破壊しつくされ、そのど真ん中で巨大なスライムが濁った体を蠢かせている。あの中には、ボクたちのともだちが、ボクの親友が、巨体を吞まれてもがいているのだろうか……あるいは、もう、既に……?

 Through The Fire and Flames……!!

 静寂を突き破った声とともに、轟々と唸りをあげる紅蓮の爆炎がスライムを内側から突き破った。飛び散る破片を炎が焼き払い、核を覆っていた細胞壁を薙ぎ払う。
 マノは全身のエネルギーを解き放ち、炎に変えて爆発させ、その勢いでスライムの内側から飛び出して来たのだ。が、彼も相当エネルギーを消耗しているらしく、片膝をついて肩で息をついている。やがて俯きながらゆっくり立ち上がるも、足取りにはふらつきを見せ、頭も左右に振れている。
 しかし、奴を倒すにはここしかない……それは彼も分かり切っていることだった。だからボクは叫んだ。
「マノ! 奴の再生が始まる前に……早く!」
「くっ、よぉぉし……行くぞーーっ!」
「ああっ、マノが拳を握った!!」
 マノは全身の力を込めて左の拳を握りしめ、ありったけのエネルギーを左腕に集中させて、声の限り叫んだ。

「Grand Sword!!」

 逆巻く炎と黒煙のなかを、スライムに向かって走り込むマノ。いつしか彼の左腕は濃橙色の光を放ち、燃え上がる炎を纏いながら輝いていた。
 スライムは核を覆うための潤沢な体積を失い、なけなしの欠片をかき集めて抵抗を試みた。だが、それによって奴は剥き出しの核を頭上に頂くような格好となり、これがマノの目測と完全に一致した。まるで呆然と立ち尽くすかのように微かに揺れ動く核を目掛けて、マノは全力疾走の勢いそのまま左腕を振り上げ、それを瀕死の核を刈り取るようにブチ当てて振り抜く。団地の広場だった瓦礫の山につんのめり倒れ込んだマノが息を喘がせる。その眼前に、表面を焼かれながら落っこちて来た核が、しゅうしゅうと悲痛な音を立ててもがいている。もはやスライムを呼び寄せる力も失せたか、蠢くだけで身動きも取れないようだ。
 瓦礫に塗れたマノは辛くも立ち上がり、その核を右手で掴み上げた。焼け焦げた表皮には、白眼を剥いた栗永の顔が刻まれていた。他の連中の顔は、もはや判別不能なくらい損傷している……。
「あーーっ!!」
 再び拳を握って叫んだマノが、中空に掴み上げた核をオレンジに光る左腕で思いっきり打ち抜いた。全身全霊のエネルギーを叩き込まれた核が一瞬、膨れ上がりゆがんだ。そして栗永の額の辺りから小さな裂け目が生まれ、そこから一気に破裂するさまがスローモーションのようにゆっくりとボクのモニターに映し出されていた。

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