1000年後、僕は感情を持つロボットに恋をして世界を闇に染める 第十一話

偽りの愛

 アジトの外にはちょっとした狭い庭がある。
 そこにあるベンチにルーシーは腰掛けていた。

「――どうしたんだ?」

 俺はルーシーの顔が悲しそうに見えたので、何となく気になってルーシーの隣に腰掛けた。

「……」

 よく見ると、ルーシーは唇をキュッと結んでいる。
 何か思い詰めているような、そんな表情を浮かべていた。

 30秒ほど経っても何も話さないので、俺から話しかけようかなとか思っていたその時、ルーシーはやっと口を開く。

「いいのかな……って」
「何が?」
「うん……だって、もちろん辛いよ。私のお母さんだもん。殺してなんて言ったけど……、」
「……」

 俺にはわからないけど、こいつにもいろんな思い出があるからな……。そりゃ自分の家族を殺してなんて、心が痛むよな……。

「シャロンを買ってくれたのは、お母さんなの。ほら、ちょっと前に犬型ロボットブームがあったでしょ?あの時にね、お母さんが『ルーシーは一人っ子だから寂しいでしょう?』って」

 ルーシーはそのまま思い出話を語っていたが、正直俺はこの先は頭に入って来なかった。

 いやちょっと待てよ。
 犬型ロボットのブームがあったのはかなり前の話だぞ!?
 確か……、噂だと400年くらい前?

 ……え、お前何歳?

 なんて言えるはずなく。

「――だからね、もちろん殺してほしいんだけどね……、」

 その後ルーシーはまた俯いてしまった。

 『どうしたんだ?』なんて聞いてしまったけど、俺は結局何も言えなかった。必死に言葉を探そうとしたけど、見つからなくて。俺に言えることなんて何も無くて。

 嘘をついている? とか、さっきは考えていたけれどやっぱり嘘なわけないじゃないか。こんなに息苦しい空間を作れるのは、本当だからだ。じゃなきゃこんなに感情移入できるはずがない。

「……」

 ふと顔を上にあげたら、こんなこと何も知らないかのように夜の空は綺麗に輝いていた。

 ……今日は星が綺麗だな。

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「ここよ」

 ルーシーの後について、俺、リーダー、露木、先崎はやってきた。
 他の兵士は皆もしもの時のためにアジトにいる。シャロンも安静にするようにということで医者と一緒だ。

「ここか」

 約1時間半ほど森の中を歩いた先にそれはあった。
 
 何年建っているのだろう。一階建ての小さい家で古臭い。怪談とかに使われてそうなイメージだ。

「迷子にならなくて済みそうな家だな」

 いや迷子って。

 リーダーは時々アホっぽいことを言う。
 未だにそれが慣れないのだが、謎だ……。

「早く殺そうぜ。大体、魔女も怪しがってるだろ。本来なら人間がこいつから渡されるはずだったのに、何も無いんだからさ」

 ギロッと先崎はルーシーを睨みつける。

「罠だったらお前も殺すからな」

 俺のことも睨みつけてきた。
 背筋がぞっとする。

 怖いな……。多分俺は先崎とだけは仲良くなれないだろう……。

 大体なんでリーダーは先崎を連れてきたんだよ。
 こいつ魔法使えないよな?

「まあとりあえず行くか。」

 とリーダーが言った矢先、

 魔女の住む家の扉がソっと開いた。
 中から出てきたのは、人では無く異形の何かだった。

「……お母さん」
「えっ!!?」

 ちょっ、待てよ!これが母親!?
 ルーシーは人間そっくりな顔してるじゃないか。
 なんで母親だけこんな、ええ!?

「ゴオオォォ……」
「恐らく人間を食べすぎたことで本来の姿では無くなってしまったんだな。」
「いやいや!ええっ!?」

 身長は高くない。
 むしろ俺が約175センチなのだが、俺よりちょっと低めなくらいだ。

 肌の色は全体的に果てしなく悪い。いやもう悪いのレベルじゃない。真っ青だ、ブルーだ。そして何より結膜が充血しているのか真っ赤で、眼光は本来丸いはずが尖っているのだ。それはもうダイヤのように。手の指の爪先も尖っている。

 もはや怪物だ。

「ルーシー……その方々は?」
「お母さん……、ごめんなさい、その……」
「ゴオオォォ……」

 え、これヤバくね?
 この雰囲気やばくね?

 母親は怒っているのか何なのかよくわからないが、ずっとちょくちょくうめき声をあげている。

「……まあよい。ならお前たち4人を食すことにしましょう。出ておいで!!」

 指パッチンが合図なのか。
 魔女が指を鳴らした後に空から何かが飛んできた。

 2体の破壊ロボットだ。
 片方の破壊ロボットの足が地面に着いた時、地面が少し揺れた。
 こいつは絶対重いし、それに俺の3倍はでかい。

 もう片方は俺よりちょっと高いくらいの身長だが。

「へっへー!ルビーナ様の獲物はお前らかー?」

 右の体重が重い方の破壊ロボットは、見た目が変な見たことがない動物みたいで、舌を出しながらゆっくりだけれどゆらゆらと揺れている。だいぶ気持ち悪い。

 てかこの魔女ルビーナって言うのか。

「ルビーナ様、ルーシーはどうされますか?」

 左側の破壊ロボットは大人しめだ。
 見た目は人間のようで、意味があるのかわからないが黒い眼鏡をかけている。目が悪いのか?

 まあなんというか、執事みたいだ。

 ルビーナはルーシーを2秒ほど見つめてから答えた。

「――殺してしまいなさい。食べる価値もないわ」

『続く』

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yumaru

小説を書くのが好きで、漫才とドラえもんが大好物な人間です。 小説は小説家になろうさんでも載せています。 https://ncode.syosetu.com/n7344fq/ よろしくお願いします〜。