会議
「んー……、」
おそらく嘘はついていないだろう。
本格的すぎる。
仮にもしこれが演技だったら、俺は多分一生人間を信用出来ないだろう。いや、人間じゃなくて魔女か。
だけど1人で決めるわけにもいかないんだよな……。
「……わかった、とりあえず俺が加わってる組織のリーダーにお前を会わせるよ。話はそれからな」
「本当に!?よかった!!ありがとう!!」
そう言って女の子は急にどーんと俺に抱きついてきた。
うーん、なんというか、あざとい……。
騙されてないよな? 俺……。
あ、そういえば。
「お前、名前なんていうの?」
俺はこの子から身体を放す。
「私はルーシーよ」
ルーシーか。
「いい名前だな」
「ありがとう……、あのねっ!、その……っ、」
「ん?」
ルーシーは3秒ほど俯いてから、犬型ロボットを腕に抱えた。
「この子……シャロンっていうの。大切なお友達なの……。治してほしくて……、」
俺が攻撃してダメージを受けたシャロンは、既にボロボロでさっきから『ピピピピピ』としか言っていなかった。
「まあ……、それも話してみないとわからないな……。」
ロボットを治すことのできる専門家はレオルにいる。
犬型のロボットだから人間型より複雑ではないし、恐らく治すことは可能だろう。
だが、まだ敵か味方かも分からない状況だ。
慎重にいかなくては、リーダーがイエスと言うまで。
「……そうだよね。私がこんなダメなこと沢山したから、シャロンは……」
「……とりあえず行くぞ。俺のリーダーに会いに行こう」
俺は俯くルーシーを連れて、アジトへ向かった。
━━━━━━━━━━━━━━━
「はあっ!? 」
アジトへ着いた俺たちは、リーダーを含めた兵士全員を呼び出しこれまでの話をした。
そして、その話をした後の第一声は、先崎隼人(せんざきはやと)という兵士の一人からだった。
「何お前、それでこいつをここまで連れてきたのか!?」
先崎はルーシーに指を指しながら俺に向かって怒鳴る。
「こいつが俺たちを騙してたとしたら、俺たちの居場所はお前のせいでバレるんだからな!!」
「……っう、」
そうか、そういえば確かにそうだった。
俺はろくに考えもせずになんてことを。
「しかもだ!仮にこいつの話が本当だとしてもだ!!こいつはこれまでに、知ってて沢山の人間を黒幕に渡してたんだろ!?こいつも人間を殺したようなものだ!なのになんでこいつを生かす必要がある!?さっさと殺すべきだ!!」
「落ち着いてよ……」
「これが落ち着いてられるかっ!!」
聞く耳も持たない先崎に、露木はため息をつく。
そんな様子を眺め、リーダーは口を開いた。
「先崎の言いたいことは分かる」
リーダーの言葉に、先崎は『ですよね』っと口角を上げた。
「だが、今ここでルーシーを殺してしまったらお前の言う黒幕の場所は分からん。だから、ルーシーのことはとりあえず置いとこう」
多くの者が、『賛成』と声をあげた。
さすがリーダー、一瞬で場の空気をまとめてしまった。
……先崎に関してはちっと舌打ちをし、機嫌を損ねているが。
「ルーシー、シャロンは後でロボット専門家の医者に預ける。1日でよくなるからな」
「ありがとう……! 」
ルーシーはホッとしたような顔をうかべた。
凄く嬉しそうだ。
「……そういえば、リンゴを口にしたレオルの住民たちはどうなるんだ? 」
リーダーの言葉にハッとする。
そうだ、わちゃわちゃしていて肝心な部分を忘れていた。
とっくにもう口にしているよな。
死ぬということはないだろうけれど、もう眠りについてるのか?
「あれは、一時的に深い睡眠を促すだけなの。ちょっとした物音で起きないようにね。効果は口にしてから2時間後で、効き目は5時間程度よ。だから平気」
「そうか……」
よかった……。
永遠に起きないとかだったらどうしようかと。
それなら安心だ。
「よし、話はまとまったな。実行は明日の朝だ!魔女を殺しに行くぞっ! 」
「おーっ!! 」
━━━━━━━━━━━━━━━
その夜、俺は一人きりで悲しそうに俯いているルーシーを見かけた。
『続く』
yumaru
最新記事 by yumaru (全て見る)
- 1000年後、僕は感情を持つロボットに恋をして世界を闇に染める 第十二話 - 2019年11月22日
- 1000年後、僕は感情を持つロボットに恋をして世界を闇に染める 第十三話 - 2019年11月20日
- 1000年後、僕は感情を持つロボットに恋をして世界を闇に染める 第十一話 - 2019年11月20日
最近のコメント