1000年後、僕は感情を持つロボットに恋をして世界を闇に染める 第十話

会議

「んー……、」

 おそらく嘘はついていないだろう。
 本格的すぎる。
 仮にもしこれが演技だったら、俺は多分一生人間を信用出来ないだろう。いや、人間じゃなくて魔女か。

 だけど1人で決めるわけにもいかないんだよな……。

「……わかった、とりあえず俺が加わってる組織のリーダーにお前を会わせるよ。話はそれからな」
「本当に!?よかった!!ありがとう!!」

 そう言って女の子は急にどーんと俺に抱きついてきた。

 うーん、なんというか、あざとい……。
 騙されてないよな? 俺……。

 あ、そういえば。

「お前、名前なんていうの?」

 俺はこの子から身体を放す。

「私はルーシーよ」

 ルーシーか。

「いい名前だな」
「ありがとう……、あのねっ!、その……っ、」
「ん?」

 ルーシーは3秒ほど俯いてから、犬型ロボットを腕に抱えた。

「この子……シャロンっていうの。大切なお友達なの……。治してほしくて……、」

 俺が攻撃してダメージを受けたシャロンは、既にボロボロでさっきから『ピピピピピ』としか言っていなかった。

「まあ……、それも話してみないとわからないな……。」

 ロボットを治すことのできる専門家はレオルにいる。
 犬型のロボットだから人間型より複雑ではないし、恐らく治すことは可能だろう。

 だが、まだ敵か味方かも分からない状況だ。
 慎重にいかなくては、リーダーがイエスと言うまで。

「……そうだよね。私がこんなダメなこと沢山したから、シャロンは……」
「……とりあえず行くぞ。俺のリーダーに会いに行こう」

 俺は俯くルーシーを連れて、アジトへ向かった。

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「はあっ!? 」

 アジトへ着いた俺たちは、リーダーを含めた兵士全員を呼び出しこれまでの話をした。

 そして、その話をした後の第一声は、先崎隼人(せんざきはやと)という兵士の一人からだった。

「何お前、それでこいつをここまで連れてきたのか!?」
 
 先崎はルーシーに指を指しながら俺に向かって怒鳴る。

「こいつが俺たちを騙してたとしたら、俺たちの居場所はお前のせいでバレるんだからな!!」
「……っう、」

 そうか、そういえば確かにそうだった。
 俺はろくに考えもせずになんてことを。

「しかもだ!仮にこいつの話が本当だとしてもだ!!こいつはこれまでに、知ってて沢山の人間を黒幕に渡してたんだろ!?こいつも人間を殺したようなものだ!なのになんでこいつを生かす必要がある!?さっさと殺すべきだ!!」
「落ち着いてよ……」 
「これが落ち着いてられるかっ!!」

 聞く耳も持たない先崎に、露木はため息をつく。

 そんな様子を眺め、リーダーは口を開いた。

「先崎の言いたいことは分かる」

 リーダーの言葉に、先崎は『ですよね』っと口角を上げた。

「だが、今ここでルーシーを殺してしまったらお前の言う黒幕の場所は分からん。だから、ルーシーのことはとりあえず置いとこう」

 多くの者が、『賛成』と声をあげた。

 さすがリーダー、一瞬で場の空気をまとめてしまった。

 ……先崎に関してはちっと舌打ちをし、機嫌を損ねているが。

「ルーシー、シャロンは後でロボット専門家の医者に預ける。1日でよくなるからな」
「ありがとう……! 」

 ルーシーはホッとしたような顔をうかべた。
 凄く嬉しそうだ。

「……そういえば、リンゴを口にしたレオルの住民たちはどうなるんだ? 」

 リーダーの言葉にハッとする。
 そうだ、わちゃわちゃしていて肝心な部分を忘れていた。

 とっくにもう口にしているよな。
 死ぬということはないだろうけれど、もう眠りについてるのか?

「あれは、一時的に深い睡眠を促すだけなの。ちょっとした物音で起きないようにね。効果は口にしてから2時間後で、効き目は5時間程度よ。だから平気」
「そうか……」

 よかった……。
 永遠に起きないとかだったらどうしようかと。

 それなら安心だ。

「よし、話はまとまったな。実行は明日の朝だ!魔女を殺しに行くぞっ! 」
「おーっ!! 」

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 その夜、俺は一人きりで悲しそうに俯いているルーシーを見かけた。
 

『続く』

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yumaru

小説を書くのが好きで、漫才とドラえもんが大好物な人間です。 小説は小説家になろうさんでも載せています。 https://ncode.syosetu.com/n7344fq/ よろしくお願いします〜。