午後4時。
雨上がりのアスファルトがギラリと光る。金色の光と、黄色い日差しの混じった空気が湿ったにおいと一緒に吸い込まれてゆく。
鼻から喉へ、肺から胸の奥へ。血管に溶けたオキシジェンが心臓に入って脳へ、脊髄へ、肩へ、腕へ、手首へ、指先へ。
堂々巡りの結論をぐるぐると持て余したまま歩いている。
どうすれば良かったのか。
どうして欲しかったのか。
それがダメなら、どうしようか。
答えはとっくに出てる。ずっとそこに見えてる。ただ後悔と諦めの悪さが後ろ髪を引っ掴んで離さない。
人工頭脳がこんにちは
培養された皮膚のうえ
いま目の前を物凄いスピードで
走っていった
赤い列車に僕も乗せてよ
膨張してゆく筋肉
千切れては繋がり際限なく
膨張してゆく筋肉
激流の如く巡る血液
誰にも言えないことに限って、誰かに聞いてほしくなる。
どこにも書けないことに限って、どこかに書いてしまいたい。
守秘義務も黙秘も忘れてしまうほどのストレスを他人が浴びていたとして、そのストレスのとばっちりだけを浴びていてもそれはそれで十分なストレスで。
怒りや嘆きややりきれない憤りの柄が描かれた紙袋を被せた自己否定を垂れ流されたら堪らないのはこっちの方だ。
誰に言うまでもなくやめようと、だけどそれすらも突き刺さって去ってゆく人がいる。誰に何を言われても皮膚を割いて肉を突き血管を切り裂かれるほど辛いなら、どうしていつまでもそんなところにボケタンと突っ立っているのだろう。
辛い辛いしんどいと言う奴ほどその場で地団駄を踏んでいるのは、もう前にも後ろにも進む気力すら失せてしまい、足の踏み出し方すら忘れてしまっているから。
自己批判自己否定自己責任現実逃避。何でも出来るくせに前向きにだけは生きられない。前を向いても辛いだけ、何も出来ない自分が鏡の中に居て聞こえよがしに喚いてる。
世の不条理と己の不甲斐なさのミクスチャー。
誰にも好かれない自分が鏡の中に居てこれ見よがしに曝け出してる。
誰かのせいで付いた傷と血膿と瘡蓋のリミックス。
雨がやまないのではなく、雨の降る場所に向かって歩いてしまっているだけ。雨のよく降る場所で立ち止まっているだけ。地図を広げて確かめて、はじめの一歩を踏み出すことすら億劫にさせる疑心暗鬼の雨が降る。生温くて居心地の良い、水たまりの中で泥になって沈んでくまで。
外に出れば辛いことだらけ、私の人生泥だらけ。
疑心暗鬼の雨が降る、萎んだ体に、萎えた頭に、衰えた心に、生温い泥水が浸み込んで
私の人生泥だらけ。
空は青くて果てなくて
海も青くて果てなくて
私だけが置き去りのまま
膨れ上がる心と体を持て余して
青空の下を歩くことなんて出来ない
青い海を見つめていることなんて出来ない
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいしか
出てこない
ごめんなさいしか、出しちゃいけない
そんな気がして、ごめんなさい
いつかこの雨がやんで、風が吹いて、雲が晴れたら。綺麗な夕焼けが見られるかな。沈んでく夕日が真っ赤に燃えて、空と雲が赤い虹になって。だんだん夜に溶けてゆく。綺麗な夕焼けが見られるかな。
人工知能がさようなら
凡庸だから裏切った
いま目の前を物凄いスピードで
走っていった
赤い列車に僕が乗ってる
膨張してゆく肉体
赤い列車に僕が乗ってた
誇張された憂鬱
膨張してゆく肉体
肥大化した筋肉
震え出す心臓
死ぬまで悩んで、死んだら腐って
みんな道連れ、この身の果てはどうせ地獄で
みんな道連れ、毒吐き失礼、ネガティブ問答
わざわざ何かを探して見つけて
自分のことかと怒る人ほど
その場を離れて深呼吸すら
する気もないのにまだ死なない
いま目の前を物凄いスピードで
走っていった
赤い列車に乗ってる僕は
綺麗な夕焼けが見られるかなあ


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