真夜中を切り裂いて走るヘッドライト。夢を忘れた夜、夢を失くした夜、空っぽの街角。夢、って、なんだっけ。僕の夢、君の夢、夢の国、夢の島、夢の色、街の色、空の色、風の色、全部振り切って何処か遠くへ向かうつもりで乗り込んだバスが、僕の地元を一向に出ない。今まで如何にかなって来た人生の、如何にかするために積み重なった代償がツケになって溜まってて、そろそろ支払いが始まる頃合いで。傍から見ればそれなりに幸せな暮らしをしているように見えるのが猶更キツい
この先もっともっと、ずるずると落ちてゆくのだろうか。怠惰で不安で不満ばかりが小さく降り積もる空調の効かない熱帯夜みたいな人生が、この先ずっとずっと、ずるずると続いてゆくのだろうか。死にたいほどは辛くないけど、生きてるのがダルい程度にキツい明日が毎日ちょっとずつ温度を上げてゆく。顔色が変わってゆく。優しかった人たちは、何処の場所にもちゃんと居た。だけどその都度、振り切って今ここにいる自分で自分を見下ろして呆然とする。どうしてココに? いま何してる? その気持ちをシェアしよう!
大きなお世話ばかりが大きな声と顔をして大きな文字でまかり通ってぶつかり合う。手元の白い端末がぼんやり光る。液晶画面の中でひしめき合う大きなお世話と余計なお世話。減らず口の支離滅裂
僕は此処に居る、此処に居るんだ。それを如何やって誰に伝えたら、僕の明日は色を変えてくれるのだろう。風向きが変わってくれるのだろうか。僕は此処に居る、何処に居る誰に伝えたら、僕は今の暮らしを変えてゆけるのだろう
春も夏もいつの間にか通り過ぎて、こんなに暑いと何もしたくならない。と毎年のように呟いて。そして年々、夏だけは確かに右肩上がりで気温を上昇させてゆく。成長しなければならない、数字を上げていかなくちゃならない。愚直な、馬鹿の一つ覚えみたいな慣習を守っているのが気温と民営化された企業ばかりでは誰も彼も休むことはおろか成長し続けなければ息をすることすら許されなくなる気がして。すでに自分は、誰かに許されて生かされて、それを有難って暮らして、感謝や絆や思いやりという言葉で耳触りだけは心地よくされて明日も炎天下
埋もれてゆく人生、下り坂を緩やかに転がり続けていることに漸く気が付いた人生
どうすればいいのか、見上げた空と地面が交互に回る
短い間だったけど夢を見て夢に生きた頃があった。それを人生のピークにしたくなかった。諦めと後悔と挫折を栄光にすり替えるつもりなど毛頭ない。だけど何時の間にか、そんな風になってしまっていることがある。自分で言うのは構わないが、他人から、それも割と親しいと思っていた人から
「二か月しかおらんかった話をいつまでするねん」
と言われたら、流石にちょっと心にクるね。自慢にもならない、遠い国の思い出話をしていただけなのにな
それが二か月じゃ終わらなかったら、きっと僕はプロレスラーになれてた。でもそうしたら、今の自分たちも何もない全く別の世界に生きてた
それをこの十五年間も、そしてこの先の人生が続く限り、胸に抱え続けて生きていくのにな。何をするにも否定的で後ろ向きでつまらない考えなのに、それをヒトの話をさえぎってまで聞かせてくれる。美味しいトウモロコシの話をするだけなのに、いかに自分がトウモロコシが苦手で特に食べたいとは思わないか、という大した理由でもない話をする
よくこんな奴と一緒に趣味を持って出掛けてくれる奴がいるなあ
と素直に思う。そんな奴にしか相手にされない自分が嫌になる。下り坂を一緒に転げ落ちてくれる人か、いつでも受け止めて軽くでいいから励ましてほしいだけなのにな
大丈夫だよ、きっと出来るよ、って。言って欲しかっただけなのにな。それをする程の信用も信頼性も失われたというなら、早いところ自発的に出てってくれないかな。合わないところが多々あっても、意見の衝突や擦り合わせが苦手でも、此処に居るなら面倒を見なきゃならん。感謝もしてるし、別に叩き出したいとまでは思ってない
出てくなら、止めないけど
きっと出て行かれたら下り坂の角度がグンと増すだろう。そうして優しかった寄る辺をまた一つ失って、焦ったり狼狽えたりするのだろう
僕の時間軸を戻すか、さもなければ転げ落ちた分を取り返すために。僕は明日も坂道を転がり落ちながら考える。どうしてこんなことになっちゃったんだろうなあ、どうすればよかったんだろうなあ、誰に如何伝えればいいのかなあ
誰かに見つけて欲しいなあ
第56回「TIME AXIS」
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ダイナマイト・キッドです
写真は友人のクマさんと相撲を取る私
プロレス、格闘技、漫画、映画、ラジオ、特撮が好き
深夜の馬鹿力にも投稿中。たまーに読んでもらえてます
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