素質
「ママっ!! パパっ!! 」
脳裏によみがえる記憶。
学校が終わっていつものようにランドセルを背負いながら帰宅した。玄関を開けた時、まだ6歳だった当時の俺は目の前の予想外の光景に声が出なかったんだ。
母親と父親が倒れていた。
そして床には大量の血が広がっていたんだ。
そこには確かにミアがいて、ミアの手は真っ赤に染まっていた。
「君誰……? 」
当時の俺は、その子のことを初めて見たのでミアだと知らなかった。ミアの目は真っ赤に染まっていて、まるで悪魔のような笑みを浮かべていた。
「私はミアです。翔真様、私はこれから貴方とずっと一緒です」
ミアの頬が赤く染まっている。
照れてるのか? 意味がわからない。
「私が貴方の家族になるので、安心してください」
何が安心だ、
逃げなきゃ、逃げなきゃ、
多分あの時の俺はその時そう思っていた。
だけどミアは一瞬で俺の目の前に来て、そして額に手を当てたんだ……。
そこで俺の記憶は終わった。
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「うわああぁ!!! 」
俺は意識を取り戻した。
熱くて苦しい。この気持ちはなんだ?
怒りと力が身体中から込み上げてくる。
俺は母親や父親に捨てられたわけじゃなかった。
母親と父親は死んでしまったんだ!
ミアが、俺の母親と父親を殺したんだ!
俺はミアによって都合よく記憶を変えられていたんだ!
(でも、どうして?)
何故だ。なぜ母親と父親は殺された?
ミアは何故俺をここまで育ててきたんだ。
「大丈夫か、翔真」
気がついたらリーダーと露木が俺の傍に駆け寄ってきていた。
「俺、さっきの……」
「今あんたが見たのは真実の一部よ。ここは真実の部屋。」
真実の部屋……。
真実の一部を見せる部屋ってことか。
「こうして真実を見せて、怒りというエネルギーを引き出すんだ。するとそのエネルギーが魔法になる」
なるほど……?
なんだかいまいち理解できてないが……。
「俺が選んだ藍色の本、これ違うの開いてたらどうなってたんですか? 」
「それは俺にもわからない。だが、」
リーダーは胸ポケットから赤色の本を取りだした。
「あっ……」
俺と同じ形をしている。
柄が無く、色が違うだけだ。
そしてリーダーはその本を開いた。
何やら読むのが嫌になりそうなほどズラーッと字が並べられているように見える……。
「俺の魔法の呪文だ」
「えっ! リーダーも魔法使えるんですか!? 」
「当然だ」
知らなかった……。
しかし今までリーダーは大鎌のような形をした武器で戦っていたような。
「発展途中だからまだ使えないが」
ああ……、なるほど。
「樫村も開いてみろ」
リーダーの指示に従い、俺も俺が選んだ本の1ページ目を開いてみた。
リーダーの本と同じようにズラーッと文字が並べられていたが、よく見ると違う文字だった。
「この本に書いてある呪文を放つことで魔法が出せるようになるんだ。呪文はそれぞれ違う。つまり、選んだ本によって技が異なるということだ。」
じゃあえっと……、俺があの時違う色の本を手にしていたら、また呪文が違ったという訳か……。
「え、でも露木がシールドを放ったあの時、露木は呪文言って無かったですよ? 」
「慣れれば呪文なんか言わなくたって使えるようになるのよ」
そういうことか……。
「1人1冊までしか本は持てない。だから今ある本を頼りに技を使って破壊ロボットを殺すんだ」
リーダーは自分の本を強く握りしめた。
怒りをエネルギーにして呪文を放つ……。
リーダーも露木はもそれぞれ何かを抱えているってことか……。
この呪文があれば俺たちは破壊ロボットに勝てるかもしれない。
しかし技は1人一つまで……
「いや、ちょっと待ってくださいよ。なら兵士皆で魔法覚えればいいじゃないですか! なんでリーダーと露木だけ、っ! 」
「耐えられないのよ、素質がなければ」
耐えられない……?
「呪文を使う為のエネルギーだ。たくさんのエネルギーを一気に引き出す為、通常の人間はそれに耐えられず死に至る」
そんな……。
「俺も最初はそんなこと知らずに兵士の何人かを死なせてしまったんだ。だから安易に教えられないんだよ」
……じゃあ俺は魔法を使うための素質があったってことか。
もしかしたら死ぬ可能性もあったのか……。
「俺は、露木と樫村の素質を見抜いた。そしてお前は生きてここにいるんだ。だから見せてくれ! お前の魔法を! 」
俺に魔法が使えるのか……。
わからない。
だが試す価値はある。
破壊ロボットを殺し、そして俺の記憶の……、ミアの真実に辿り着いてみせる!
『続く』
yumaru
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