第44回「茫然メリーゴーランド」

 明るい将来を疑う事もせず、前向きなつもりで生きてきた。だけど振り返ってみればロクな事がない。青春や自分語りの為に思い出す記憶なんて、全部都合のいいように塗り替えただけ
 そんな連中が今日も何処かで、挫折した夢ばかり拾い集めて泣いている。散らばったアレもコレもかき集めてまたバラまいてまた泣いて

 楽しそうな人ばかり選んで見つめていた。輝いて見える人が流れる血を拭えば、その血はまがい物で、その苦痛も悲劇も造り物だとうそぶいた
 振り向けばそこに 何も残らなかった。自分は何もかも全部中途半端で、その中途半端な感情に涙も流れなかった

 まるで壊れたレコードプレーヤーのように、あきらめた恋ばかりを思い出して後悔する。それが日課で生き甲斐、それ以外の楽しみも心の動かし方も持たずに生きているうちに忘れてしまった
 僕がいつか好きだった、大人になったあの子にはとっくに忘れられている。ただそれさえも自覚するのが怖くて、感情の変化と日常の兆しを萌芽のうちに潰して生きてる

 美しき青春とは無駄死にの遠吠えの果てに、何かになりたくて、何にもなれなくて、それでも真っすぐに生きて真っ逆さまに落ちて行く様。そしてそれでも後悔せずに生きること
 美しき青春が犬死の運命だと知ってても、誰かになりたくて誰にも相手にされなくても、燃えるように生きているつもりだった。気が付けば抜け殻のようになっていた
 茫然としたまま見送った 木馬の群れが青空を往く

 変わらないことだけに確執して、変われない自分に固執していると、変わってゆく人はみんな裏切り者ってことになる。些細な変化も受け止められず、自分だけが置いてゆかれて、その当然の帰結さえ誰かのせいに出来るからラクな人生。だけど後に何も残らずに、それすらも誰かのせい。自分の責任で自分を変えていって、新しい何かを見つける、生み出すことから逃げて逃げて。その場にとどまっていることしか生き方がない、話題がないというのは哀れで寂しくて、それだけに気楽に見えるもので。だけど自分がそうなりたいか、と言えば答えはNOだ
 永遠に木馬から降りることを拒み続けて、颯爽と木馬を降りて大人になったあの子をいつまでも探してる。あの子に似ている人を。あの子と同じように会える人を。あの子よりも胸が大きくて心が寂しい人を。そんな生活の中で、ふと見上げた空を駆けてゆく木馬が今日も堂々巡りを続けてる。それを呆然と見送っては、また萌芽を潰して人探し
 好きだったあの子は、いま生まれたての自分の子供を木馬に乗せて、幸せそうな顔をしている

 堂々巡りのメリーゴーランドも、起伏に富んだジェットコースターも、縦横無尽に走り回るゴーカートも、全ては同じ遊園地の中。行き着く先は皆同じで、チケット売り場には財布と相談顔の行列が今日も伸びていて
 横入りしようとする奴や、他人の金の使い道に口出しして儲けをせしめようとする奴が敷地の中をウロウロしている
 もっともらしい背広を着て、もっともらしい話し方で、どんな人に対しても感謝と礼儀と慇懃な物言いを徹底する奴はマニュアル片手のペテン師か、片棒を担がされていることにも気づかないマヌケだろう。だけどメリーゴーランドに乗り続けて、茫然としたまま目が回ってる奴に、手を差し伸べるのはそんな奴等ばかりだ
 そうして自分も木馬を回す側になれると勘違いして列を離れ、そのまま戻ってこなくなるか、もっともらしい背広を着て、もっともらしい話し方で、他人の金の使い道に口出しするために戻ってくる。感謝と礼儀で塗りつぶされた、何処かのペテン師のマニュアル片手に

 遊園地は今日も晴れのち雨で、傘を畳む音がそこかしこで響いてる
 そうして今日も夕焼け空を、茫然としたまま見送った木馬の群れが往く

The following two tabs change content below.
ダイナマイト・キッド
ダイナマイト・キッドです。 プロレス、格闘技、漫画、映画、ラジオ、特撮が好きな33歳肥満児です。 深夜の馬鹿力に投稿中。たまーに読んでもらえてます。 本名の佐野和哉名義でのデビュー作 「タクシー運転手のヨシダさん」 を含む宝島社文庫『廃墟の怖い話』 発売中です。 普段はアルファポリス          https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/376432056 小説家になろう                   https://mypage.syosetu.com/912998/ などに投稿中。 エッセイ、怪談そのほか文章のお仕事もお待ちしております。 kazuya18@hotmail.co.jp までお気軽にお問い合わせ下さいませ
ダイナマイト・キッド

最新記事 by ダイナマイト・キッド (全て見る)

ABOUTこの記事をかいた人

ダイナマイト・キッド

ダイナマイト・キッドです。 プロレス、格闘技、漫画、映画、ラジオ、特撮が好きな33歳肥満児です。 深夜の馬鹿力に投稿中。たまーに読んでもらえてます。 本名の佐野和哉名義でのデビュー作 「タクシー運転手のヨシダさん」 を含む宝島社文庫『廃墟の怖い話』 発売中です。 普段はアルファポリス          https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/376432056 小説家になろう                   https://mypage.syosetu.com/912998/ などに投稿中。 エッセイ、怪談そのほか文章のお仕事もお待ちしております。 kazuya18@hotmail.co.jp までお気軽にお問い合わせ下さいませ