当時のAssemble零(ゼロ)っちゅうたら死神が憑りついてお得意さんになっとるんかっちゅうくらいの、激戦区のなかの激戦区やった。ここに召集されるっちゅうんは、もうそれすなわち地獄行きの片道切符を寄越されたようなもんで、殆ど死ねっちゅうのと同じやった。だがそこで戦い抜いて来たんが、ブラウンや。化け物やでホンマ。前線で色んな奴を見て来たし、開発局にも軍の偉いさんから歴戦の猛者からよう来とった。せやけどな、ブラウンほどおっかない奴は見たことないし、今でもおらんわ。
……ワシが零に配属されたときは戦況がいっちゃん最悪な時分でな、武器も弾薬も機械も乗り物も、みんな直せるほどのもんは残っとらんねん。ちょっとでも動いたら無理やりにでも乗って、残り少ない弾薬(タマ)や壊れてへん武器かき集めて、それで戦っとったんや……そこへなんも知らんと来たワシを出迎えたんが全身血まみれ、今にも死にそうなブラウンやった。
血ぃで真っ赤になっとるうえ失血死寸前で真っ青な顔したブラウンが、ワシが全身に括り付けて来た武器弾薬を見て開口一番なんと言ったか。
「その銃と弾薬(タマ)あるだけ寄越せや!!」
否も応も無いで、ワシがなんも言わんうちに武器からタマから分捕って、そのままクルっと振り向いて出かけて行きよったんや。
零で相手しとったのは独立広告放送機構っちゅうたか、バイオテクノロイドって……要するに広告用に遺伝子を弄ったり機械を埋め込んだり他の生きもん同士をくっつけて合成したりした動物を戦闘用に転化した生物兵器を使う連中でな。
えげつないで、首が三つあるチワワとかやな、神経節にチップ埋め込んでコントロール出来る巨大なスズメバチの大群、畳八畳敷くらいの大きさで地面を走りながら腹の裂け目から出た触手で人間を喰う地走りイトマキエイ、極めつけが元祖なにわの大(おお)キメラや。
ごっついでぇ、金色のうろこがピカピカぬらぬら光るガラガラヘビの尾っぽにツキノワグマの胴体、手ぇは左右にサソリが一匹ずつ付いてアホウドリの翼があって顔はダチョウが二股になって付いとんねん。足もなんや大きな鳥のが付いとったなあ。そんなんがアホウドリやさかい、ビルから崖からちょっと高さがあったらザァーー降りて来よんねん。ほんで蛇に噛まれたりサソリに刺されたり挟まれたり……。
なんしょ難儀しとったけども、ブラウンはそのけったいな生物兵器どもを次々に破壊していきよった。見ててスカっとするで、痛快っちゅうのはこのことかと思うくらいにな。
こっちもやられてばかりじゃ腹立つさかいにな、ワシも一生懸命、新兵器開発してブラウンに持たしたったんや。それが始まりやったなあ。
最初は怪訝な顔、されたけどな。だんだんワシの武器が役に立つっちゅうんで向こうからも、こんなもん出来(でけ)んか、こんな武器どないや、と色んな注文が来るようになった。
相手は生物兵器っても虫かケモノや。せやったら、やっぱ火ぃやろ。
せやけど普通の火ぃは通用せぇへん。ほなどないするか……答えはカンタン。もっと燃やしたったらエエねん。要は温度……奴等は普通の動物や虫より丈夫な毛皮や甲殻で火ぃの温度に耐えとるんや。それやったら、その毛皮や甲殻でも余裕で燃したったらエエ。そう思って開発したんが……待っとれよ、確かこの辺にまだあんねん……ああコレや。サンガネ、持ってみぃ。
そうそう。ごっついやろ……これが地上最悪の放電兵器、ガイアプラズマや。見た目はアレや、下町の路地の二階から出よるパラボラアンテナやねんけどな。要するになんぼ炎を浴びせてもアカンのやったら、直接、ダイレクトに、もう相手をメチャ熱(あつ)くしたったらエエんよ。せやからコレで地べたから空気中に至るまで放電して超高熱まで持ってったら相手は黒焦げ。
コレ使(つこ)たブラウンが喜びよってなあ。ワシの傑作やで。
そっからや。ワシとブラウンのコンビは連戦連勝、地獄のAssemble零を生き抜いたったわ……。


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