力
俺は右手を空へとかざしながら、本に書いてある文字を読んだ。
「ぺデゥーサアラクレパルモーレ! 」
シーン……。
「……?」
おかしいな、何も起きない。
仕草が違ったのかな。
俺は右手を差し出して、今度は力を込めて読んだ。
「ペデゥーサアラクレパルモーレ! 」
シーン……。
しかし何も変化が無い。
体に力が湧き上がってくるような、そんな感覚すらない。
(え……? もしかして俺って才能ない……?? )
「おかしいですね……」
「ああ、おかしいな……」
待ってこれ主人公無能ENDだったりするの!?
おれそんなのやだよ!??
俺はやけくそになっていろんな体制で試した。
時にはジャンプしたり床に手を押し当てたりしながら。
「ぺ……、ぺでゅーさあらくれぱるもーれ……」
かれこれ何回試したのだろうか。
運動不足の俺は、はぁ……っ、はぁ……っと情けないほどの荒い呼吸をしていた。
「なんでだ……、俺には無理なのか……っ!? 」
俺が諦めかけたその時!
「――っは!! 」
リーダーが突然言った。
「すまん樫村! 真実の部屋内では、神聖な場所な為魔法は使えなかったっ!! 」
「えっ!! 」
「あー……、そういえばそうだったわね。忘れてたわ」
「えーっ!?? 」
俺は呆れ返って、思わずその場に座り込んでしまった。
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……そんなわけで、俺たちは外に移動した。
「よし樫村、今度こそお前の力を見せてみろ! 」
大丈夫かなこの人……。
いやでも実力は確かなんだよな……。
「すぅー……、はあー……」
俺は気を取り直して深呼吸する。
そして右手を空に振りかざした。
(俺の魔法を見せてみろっ!! )
「ペドゥーサアラクレパルモーレっ!! 」
静かな風が吹き、周りの草や花が揺らめき始める。
「これは……」
リーダーの目付きが変わった。
風はだんだん強く吹き始める。
そして手に何か凄まじい力を感じたような気がして、俺は自然と振り上げていた手を前に差し出した。
その瞬間!
バンッ!!
大きな爆発音と共に、目の前にあった木が突然破裂し出したのだ!
「嘘……だろ……」
(これ……、俺がやったのか……?)
しかも、葉はパサパサになって枯れていた。
「―――凄いなっ! 樫村!! 」
リーダーは笑顔で駆け寄ってくる。
「この魔法があれば、破壊ロボットとの戦いでかなり有利になるぞ! 」
「は、はい……! 」
俺の心臓の音が高鳴っているのが分かる。
こんな魔法が使えるなんて、俺ってもしかしてかなり凄いんじゃないか……?
「……」
俺とリーダーが喜びあっている中、露木は不満そうな顔を浮かべていた。
「……露木、どうした? 」
「いいえ、なんでもないわ。……凄いじゃない、よかったわね」
露木はそう言って、背中を向けどっかに行ってしまった。
「この技を磨けば、もしかしたら2、3体一気にバーンってできるかもしれないなっ! 」
「そうですね……」
どうしたんだ……?
俺は遠くなっていく露木の背中を何となく見ていた。
『続く』
yumaru
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