罠
━━魔法……
この化学文明の世の中で魔法なんてものが存在するのか?
しかし露木が放ったあのシールドは魔法以外になんて呼んだらいいか正直わからない。
俺と露木はリーダーに連れられて、アジト内の地下にある1つの扉の前に辿り着いた。一見普通の扉であるが。
そしてリーダーはその扉の前に立ち止まり突然意味のわからない言葉を話し出した。
「真実の扉よ! 我に道を示せ! 」
「??? 」
え、何あれか。開けゴマ的なやつか??
その瞬間扉が光に包まれ、次に見た時俺たちは見知らぬ場所にいた。
「え……っ、」
そこは先が見えない真っ白な部屋で、教室にある勉強机的なものが、いくつか大きな円を作る形で並べられていた。そのそれぞれの机の上には全て分厚い本が置かれている。
「ここは……、なんですか? 」
「真実の部屋だ」
……真実の部屋?
「この中から直感で好きな本を選べ。それが樫村の今後の力になるだろう」
今後の力? 好きな本?
「でも、いいんですか? もしその力に耐えられなかったら……」
? リーダーも露木も意味のわからないことを口にしている。正直全くついていけないのだが。
「大丈夫だ、お前なら使いこなせる。お前の力を見せてみろ」
「えっと……」
リーダーが真っ直ぐな目で俺を見ている。
露木が不安げな目で俺を見ている。
俺は不安しかない。
(……要するにだ? 直感で選んだ本によって何かが起きるってことか……? )
まあ試すしかないか。
このまま無言で見合っていても仕方が無いし。
俺は辺りにある本を見渡した。
色んな色がある。王道な色から珍しい綺麗な色まで……、だが全てに柄は無かった。
……まあ直感でいいって言ってたしな。
俺は一番好きな色である藍色の本の前に立った。
「それで、どうするんですか?」
「本を開くんだ」
俺はリーダーの指示通り、藍色の本を手に取る。
すると、本から声が聞こえてきた。
『ふふ……本当にいいのかい? この本はお前を苦しめるよ……お前は闇に染まるんだ……』
「ひっ! 」
何だこの声!
次第に辺り全体が藍色に染まっていく……。
「リーダー! 危険では!? 」
露木の声がした。俺は慌ててリーダー達のいた方を振り向いたが、辺りが暗くなりつつある為人の影が見えなかった。
「これでいいんだ。樫村! さあ、開けっ! 」
(……本当に開いていいのか?)
一瞬迷ったが、リーダーの命令だ。俺は少ししてからその本を開いた。
その瞬間藍色の光を眩しいほどの白い光が覆う!
俺の脳内にいろんな記憶がよぎった。
リゼシュー村が襲われたこと。学校で授業を受けていたこと。食事や睡眠をとっていること。
母親と父親がいること。ミアがいること。
そして……、ミアが母親と父親を殺していたことを。
『続く』
yumaru
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