小魔女
ある日、俺はレオルに食料を買いに来ていた。
「いらっしゃーい! 安いよ安いよー」
(なんだあの店)
客が群がっている。
看板には『果物安い屋』と記載されていた。
どれだけ安いのか、ちょっと見てくか……。
俺は群がる人の間に何とか割り込みながら入っていく。
「嘘だろ!? 」
リンゴ1個……、20円!?
安すぎだろ……
この店潰れないのか……?
「ちょっ、おばさん……。このリンゴ安すぎやしません? 」
安くても150円が限度だろ……。
このご時世、ただでさえロボットとの戦いで荒れて、食料も取りにくくなっているはずなのに。
「あら? お兄さん知らないの? 」
「え? 」
「何故か昨日突然ね、こっからちょっと行った先に、リンゴの実が既に成ってる木がそりゃあもうパーっと大量に生えたのよ」
「えっ、そうなんですか!? 」
それは凄いな!!
え……、いやでも待てよ、それってなんだか逆に怖くないか……?
「そうなのよ。最近食料不足で皆食べ物が無くて困ってるじゃない? だからね、尚更これはチャンスだと思って。」
ふうん……。
いやでもやっぱり怪しいな。
木が急に生えてくるだけでも謎なのに、実まで成るか?普通
それも一日で。
「おばさん、その木がある場所ってどっち? 」
「ああ、あっちよ」
おばさんは指先で道を示す。
「サンキュっ! 」
俺はおばさんに示された方向へとトコトコと歩いていく。
(今日は気持ちがいいなあ)
日が出ていて、風もちょうどよく心地いい。
こんな日は散歩するのにもってこいだな。
まあ散歩なんてしてる余裕あんまり無いんだけどさ。
こうしてる間にも、破壊ロボットはいつどこで現れるかわからないんだから……。
トンカチでトントンと叩く音がチラホラと聞こえる。
破壊ロボットの反撃でレオルの一部がダメージを食らったが、住民達の活動により徐々に修復している。
皆笑顔で楽しそうだ。
(……よかった)
━━━━━━━━━━━━━━━
「……と、」
(これがリンゴの木か……)
凄いな。
ざっと見るだけで1000本以上はあるぞ。
これは食わなきゃ損だな……。
「にしてもなんでこんなに木が突然……」
「ん? 」
よく地面を見てみると、そこには何かが刻まれていた。
(いや待てよ、どっかで見たことあるなこれ……)
俺は胸ポケットに入れていた藍色の本を手に取り、開く。
適当にパラパラとめくっていると、なんと同じ形の絵が描かれているページがあった。
「……んーっと? 『これは、悪い魔女が昔人間を安全に食べる為に作った魔法陣です』……って!? なんだこれ! やばいやつじゃないか!? 」
続きを読むと、毒リンゴを食べさせて眠った所を夜中にこっそり食べに行くとか。
「大変だ! 早く皆に知らせないと!! ――っいて!! 」
突然コツンとリンゴが頭に投げられてきた。
「何すんだよ……、ん? 」
投げてきた方向へ目を向けてみると、そこには赤ずきんの様に赤い帽子を被った小さな女の子がいた。その子はカゴを持っていて、そのカゴの中には少しだけリンゴが入っていた。
「お兄ちゃん。私の邪魔するなら許さないから! 」
「は? ……え、」
もしかして、この子が魔女……?
「ええ……、待てよ、俺子供を殺すのはさすがに……」
いやでもこの子が人間を食べるのか……?
想像できないな……
「もしかして、バカにしてるの? 行けっ! シャロンっ!! こいつを殺っつけて!! 」
後ろから何かが現れた。
「ワンワンっ!! 」
それは、犬の形をした破壊ロボットだった。
背中にはやばそうな武器がつけられている。
相手が犬形ロボットなだけに、スピードが凄く早い!
(これはいきなりヤバい相手だぜ……)
「――でも! 俺の初の能力を試す時が来たっ!! 」
『続く』
yumaru
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