1000年後、僕は感情を持つロボットに恋をして世界を闇に染める 第八話

小魔女

 ある日、俺はレオルに食料を買いに来ていた。

「いらっしゃーい! 安いよ安いよー」

(なんだあの店)

 客が群がっている。
 看板には『果物安い屋』と記載されていた。

 どれだけ安いのか、ちょっと見てくか……。

 俺は群がる人の間に何とか割り込みながら入っていく。

「嘘だろ!? 」
 
 リンゴ1個……、20円!?
 安すぎだろ……
 この店潰れないのか……?

「ちょっ、おばさん……。このリンゴ安すぎやしません? 」

 安くても150円が限度だろ……。
 このご時世、ただでさえロボットとの戦いで荒れて、食料も取りにくくなっているはずなのに。

「あら? お兄さん知らないの? 」
「え? 」
「何故か昨日突然ね、こっからちょっと行った先に、リンゴの実が既に成ってる木がそりゃあもうパーっと大量に生えたのよ」
「えっ、そうなんですか!? 」
 
 それは凄いな!!
 え……、いやでも待てよ、それってなんだか逆に怖くないか……?

「そうなのよ。最近食料不足で皆食べ物が無くて困ってるじゃない? だからね、尚更これはチャンスだと思って。」

 ふうん……。

 いやでもやっぱり怪しいな。
 木が急に生えてくるだけでも謎なのに、実まで成るか?普通
 それも一日で。

「おばさん、その木がある場所ってどっち? 」
「ああ、あっちよ」

 おばさんは指先で道を示す。

「サンキュっ! 」

 俺はおばさんに示された方向へとトコトコと歩いていく。

(今日は気持ちがいいなあ)

 日が出ていて、風もちょうどよく心地いい。
 こんな日は散歩するのにもってこいだな。
 まあ散歩なんてしてる余裕あんまり無いんだけどさ。

 こうしてる間にも、破壊ロボットはいつどこで現れるかわからないんだから……。

 トンカチでトントンと叩く音がチラホラと聞こえる。
 
 破壊ロボットの反撃でレオルの一部がダメージを食らったが、住民達の活動により徐々に修復している。
 皆笑顔で楽しそうだ。

(……よかった)

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「……と、」

(これがリンゴの木か……)

 凄いな。
 ざっと見るだけで1000本以上はあるぞ。

 これは食わなきゃ損だな……。

「にしてもなんでこんなに木が突然……」

「ん? 」

 よく地面を見てみると、そこには何かが刻まれていた。

(いや待てよ、どっかで見たことあるなこれ……)

 俺は胸ポケットに入れていた藍色の本を手に取り、開く。

 適当にパラパラとめくっていると、なんと同じ形の絵が描かれているページがあった。

「……んーっと? 『これは、悪い魔女が昔人間を安全に食べる為に作った魔法陣です』……って!? なんだこれ! やばいやつじゃないか!? 」

 続きを読むと、毒リンゴを食べさせて眠った所を夜中にこっそり食べに行くとか。

「大変だ! 早く皆に知らせないと!! ――っいて!! 」

 突然コツンとリンゴが頭に投げられてきた。

「何すんだよ……、ん? 」

 投げてきた方向へ目を向けてみると、そこには赤ずきんの様に赤い帽子を被った小さな女の子がいた。その子はカゴを持っていて、そのカゴの中には少しだけリンゴが入っていた。

「お兄ちゃん。私の邪魔するなら許さないから! 」
「は? ……え、」

 もしかして、この子が魔女……?

「ええ……、待てよ、俺子供を殺すのはさすがに……」

 いやでもこの子が人間を食べるのか……?
 想像できないな……

「もしかして、バカにしてるの? 行けっ! シャロンっ!! こいつを殺っつけて!! 」

 後ろから何かが現れた。

「ワンワンっ!! 」

 それは、犬の形をした破壊ロボットだった。
 背中にはやばそうな武器がつけられている。

 相手が犬形ロボットなだけに、スピードが凄く早い!

(これはいきなりヤバい相手だぜ……)

「――でも! 俺の初の能力を試す時が来たっ!! 」

『続く』

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yumaru

小説を書くのが好きで、漫才とドラえもんが大好物な人間です。 小説は小説家になろうさんでも載せています。 https://ncode.syosetu.com/n7344fq/ よろしくお願いします〜。