第16回 「アビキの歌が聞こえてくるよ(後)」

 正規国民はアビキに対する犯罪を厳重に取り締まるべく、新たにアビキを保護する法律を制定した。
 しかしそこには労働環境に関する項目は一つもなく、ただ非正規国民によるアビキ被害を絶対に許さないというだけのことが記されていた。
 アビキに暴行を加え、部品を略奪したり誘拐したりして不正使用(大半が自分の工場で無認可労働をさせるか、慰み物として監禁するかだった)をした者は裁判なしに無期懲役のうえ禁固刑となる。
 しかも面会や仮釈放などは一切なく、早い話がどこへ閉じ込められているか一切わからなくなる。
 そしてアビキ犯罪の犯人はアビキによって機械的に処分され、残った部品が新たなアビキ製造に活用される。
 アビキの製造工場と再生工場の隣に、新しくアビキ製造のための部品工場が出来上がった。大手アビキメーカーが関連企業を立ち上げて次々と参入し、アビキの部品の製造、輸送が活発になっていった。
 昔と違うのは、そこで働いている少数の正規・準正規国民以外はすべてアビキによる労働力であるということだ。非正規国民の居場所は完全に奪われ、もはや国家からは必要とされなくなっていた。必要とされるとしたら、それはアビキの原材料として。

 やがてアビキ保護法の違反者たちはカメラやビーコンによる監視とAIの通報システムを連携して逮捕・収監されることになり、現場での取り締まりにもアビキが投入されることになった。国家権力から労働の現場まで、再び大規模な人員整理が行われ多くの準正規国民が職を失った。非正規国民と違い生活水準の落差が大きく、自殺者や反乱・暴動を起こす者も少なくなかったが、自爆特攻用アビキによる物量作戦によって尽く鎮圧された。
 様々なプログラミングを施され、単純な重労働以外にも簡単な機械の操作や任務をこなせる高性能のアビキが次々と誕生していった。
 あれも、これも、アビキの仕事になった。
 どれも、これも、アビキのせいになった。
 これまでの流れからすると、恐らく自分たちも早々に職を追われ、アビキにされる……! 大手メーカーに勤務する正規国民たちは震えあがり、国家経営者たちへの忖度が不可欠となった。彼らは経営者に睨まれることを恐れながらも、優雅な暮らしを捨てられずにいた。

 このまま殺されてたまるか、アビキにされてなるものか。
 一方で生き残った非正規国民と職を失った準正規国民、さらには国家経営者から外れた正規国民までもが結束し、アビキの製造工場に立てこもった。
 しかしそれを世間に発信して知らせる者はただの一人も存在せず、メディアや通信インフラは既に報道機関としての機能を失っていた。
 アビキは来る日も来る日も製造され続け、愚直に自らに施されたプログラムに従い働き続けた。
 道路が敷かれ、鉄道が伸びて、汚染物質を除去し放射能を浴びて。

 そしてある日、各地での異変に気が付いた経営者たちは国家最高経営者会議を招集した。しかし時すでに遅く、国会議事堂跡に建てられた近代的な超高層ビルの前には数万人の国民と、それをさらに上回る数のアビキたちが押し寄せていた。経営者とその家族や従属たちはその場でリンチに遭い殺される者や連れ去られる者、逃げおおせた者も往来で自動車ごと爆破されたり、自宅に押し入られて嬲り殺しに遭ったりして、さらに若くて状態の良いものは監禁され慰み物になった。
 アビキと国民の逆襲が始まった。しかし正規国民くずれの反乱者は見抜いていた。非正規国民のアビキに向けられていた怒りが元・最上級の国民へと矛先が変わっただけで、質も内容も何一つ変わってはいないことを
 この暴動が終わったら、まず非正規国民たちを処分しよう。

 衣食住を保証しなるべく一か所に固めておいて、あとはアビキに大型爆弾でも背負わせて放り込めばいい。

 そのための団地や特別居住区などは、アビキに造らせればいい。
 なあにこれだけの規模の暴動だ、アビキの材料なら向こう何十年かかっても使いきれないぐらい手に入る。

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ダイナマイト・キッド
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