潰れた魂には義足も付けられない、と僕の好きな映画でアル・パチーノ演ずる盲目の退役軍人が言っていた。手遅れになってからでは支えることすら出来なくなってしまう
乾いた心では花束も受け取れない。砂漠のように荒れ果てて潤いを失ってしまったら、もう何も感じられなくなる。豊かさも、喜びも、悲しみも、幸せも嘘もすべては黄昏時の蜃気楼のように他人事の地平線へと消えてゆくばかりだ
怒りを忘れ、遠ざけ、避けてきた結果が単なる腑抜けでは何にもならない。やたらと他人を目の敵にして自分で見つけるべき落としどころを他人に依存したり、自分でつけるべき落とし前を他人に押し付けているのでは別問題だが、自分で自分への怒りや苛立ちまで一緒くたにして消してしまうのは意外と得策ではなかったのかも知れない
自分の原動力、何かを生み出すための源泉、原点が何処にあるのか
幸福な社会の片隅なのか
悩みや苦しみの奥底なのか
怒りや苛立ちを封じ込めたときの、頭の後ろがクラクラするような感触なのか
次の一歩を踏み出すための熱量と、それを燃やすための着火剤が必要ならば怒りや不満、悩み、苦しみにすら火を点けて進むべきではないのか
やりたいこと、会いたい人、行きたい場所ばかりが増えて、その重さでますます背中が苦しく足取りが鈍くなる。そんな自分に苛立ち、過去の自分に怒りを覚えたなら、今の自分が変わるべきは何処の何なのかが自ずとわかるはずだ。それが億劫で、面倒だから、思ったよりも大変だから、今の今まで目を逸らしてきた
そうじゃないのか
自分の魅力に気が付かず自分の可愛げのなさばかりに目が行く人に
あなたのステキさを受け止めてほしい
と思ったとき、私は一体なんて言えばいいんだろうか
あなたは常にだれが見ても可愛くなきゃいけないということもないし
あなたは可愛くないから魅力がないわけじゃ決してない
あなたの魅力は、可愛いということだけじゃない。もっと言えば可愛げのなさとあなたが思っていることすら傍から見たら魅力に変わっているかもしれない
だけどそれを自分が相手から同じように言われたら、やっぱり疑ってしまうし身構えてしまう。お互いに孤独と孤独で人恋しさの発露の仕方が違うだけなんだ
自分を愛せず、自分を許せず、自分を大事に出来ないまま生きてきた
それでもこれまで偶さか大したことにはならなかっただけで、いつどうなるかは誰にもわからない
幾ら恵まれていると思っても、恵まれていると言われても現状が好転しないのならば満たされることなどないし
自分で自分を騙すことなど出来るわけがない
いつまでもいつまでもそうやって塞ぎ込んで生きているつもりでも、何時の間にかきっと君は立ち直って思いもよらぬ出会いを得て
揺ら揺らと不安定ながらも微笑ましく幸せに暮らしていけるはずさ
普通にしてたって君には十分すぎるほどの魅力があり、君と過ごしたひと時は何にも代えがたかった
それはきっと、この先の誰であっても変わらないはずだ
私が君に対して思う、君が言う
「自分の可愛げのなさ」
を否定したい根拠とはつまるところそんな感じだ
君は大丈夫。だから安心して今は悩んだり、少し泣いてしまったりしてもいい
自分に向けられた好意を上手く受け止めきることも、聞き流すことも出来ずにチグハグな距離と気持ちのまま過ごしていた。そして気分の落ち込みは、そんなひずみを一層深く取り返しのつかないものにする
自分よりも年下で元気で、今のところ特に年齢差や加齢を気にしない人と一緒に居てもらって自分も元気なつもりでも
その人が自分の年齢差や加齢、生活の変化を気にするようになったとき
自分がそこにいる余地はあるのだろうか
自分、自分、自分
結局そこにあるものは自意識だけだった。砂漠のような世界を作っていったのも、そこに逃げ込んで寂しさのあまり砂を掻いては指と指の間から流れ落ちてゆくのを繰り返しては泣き言をこぼすのも、すべては乾いて枯れたふりをし続けた凡庸と半端の染み付いた自意識のせい
そして本当に砂漠の片隅に置き去りにされたことに気が付いたとき
そこには白骨化した自意識の死体だけが残っている
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